※この記事は、遺言が必要な理由を、相続弁護士が解説します(前編) の続きです。まだ前編をお読みでない方は、先に前編からご覧ください。
前編では、相続が「争族」になってしまう理由や、遺言書が家族のトラブルを防ぐために重要な役割を果たすことについて解説しました。
後編では、遺言書を作成するメリット・デメリット、遺言書を作成すべき人の特徴、遺言事項と付言事項の違い、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて詳しく解説します。
「自分には遺言書が必要なのだろうか」と迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
動画で詳しく解説しています
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動画では、実際の相続相談でよくあるケースをもとに、遺言書を作成するメリットや注意点、どのような方が遺言書を準備すべきなのかについて、弁護士が分かりやすく解説しています。
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遺言書を作るメリット・デメリット

遺言書には多くのメリットがありますが、一方で注意しておきたい点もあります。
「遺言書さえ作ればすべて解決する」というものではありません。
メリットとデメリットの両方を理解したうえで、自分に合った方法で作成することが大切です。
遺言書を作るメリット
遺言書を作成する最大のメリットは、自分の意思を法的に残せることです。
遺言書があれば、
- 誰にどの財産を残すのか決められる
- 相続人同士の話し合いの負担を減らせる
- 不要な相続トラブルを防ぎやすくなる
- 法定相続人以外にも財産を残せる
といったメリットがあります。
また、遺言書があることで、亡くなった方の意思を基準として相続手続きを進めることができます。
相続人全員で一から話し合う必要がなくなるため、精神的な負担や手続きの負担を軽減できるケースも少なくありません。
遺言書を作るデメリット
一方で、遺言書にも注意すべき点があります。
例えば、自筆証書遺言の場合は、法律で定められた形式を満たしていないと無効になる可能性があります。
また、内容が曖昧だったり、財産の記載に漏れがあったりすると、かえって相続人同士の争いにつながることもあります。
さらに、一度作成した遺言書も、その後に財産状況や家族構成が変われば、内容を見直す必要があります。
そのため、遺言書は「一度作ったら終わり」ではなく、必要に応じて更新していくことも重要です。
遺言書を作成すべき人とは

「自分には遺言書は必要ない」と考えている方も多くいらっしゃいます。
しかし、実際には遺言書を作成した方がよいケースは少なくありません。
特に、次のような方は遺言書の作成を検討することをおすすめします。
- 子どもがいない夫婦
- 再婚していて前婚の子どもがいる方
- 相続人同士の仲があまり良くない方
- 特定の相続人に多く財産を残したい方
- 介護をしてくれた家族に多く残したい方
- 事実婚のパートナーや孫など、法定相続人以外に財産を残したい方
- 不動産など分けにくい財産が多い方
- 事業を経営している方
このようなケースでは、遺言書があるかどうかで相続手続きの進め方や、家族の負担が大きく変わることがあります。
「財産が多い人だけ」が作るものではない
遺言書というと、「資産家や会社経営者が作るもの」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、実際には財産の額よりも、「どのような財産を持っているか」の方が重要です。
例えば、自宅しか財産がない場合でも、その自宅を誰が取得するのかによって相続人同士の意見が分かれることがあります。
また、預貯金がそれほど多くなくても、不動産が一つあるだけで公平に分けることが難しくなるケースもあります。
遺言書は、財産が多い人だけのためのものではありません。
「家族にできるだけ負担をかけたくない」と考える方にとって、大切な備えの一つといえるでしょう。
遺言事項と付言事項の違い

遺言書には、大きく分けて「遺言事項」と「付言事項」の二つがあります。
どちらも遺言書に記載される内容ですが、それぞれ役割が異なります。
遺言事項とは
遺言事項とは、法律上の効力を持つ内容のことです。
例えば、
- 誰にどの財産を相続させるか
- 遺贈する財産の指定
- 遺言執行者の指定
- 子どもの認知
などが遺言事項にあたります。
これらは法律で認められた事項であり、適法に作成された遺言書であれば法的な効力が生じます。
そのため、自分の希望どおりに財産を引き継いでもらいたい場合には、遺言事項として正しく記載しておくことが重要です。
付言事項とは
一方、付言事項とは、法的な効力を持たないメッセージのことです。
例えば、
- 家族への感謝の気持ち
- 財産の分け方を決めた理由
- 相続人へのお願い
- 今後も家族仲良く過ごしてほしいという願い
などを自由に記載することができます。
法的な拘束力はありませんが、亡くなった方の想いや考えを家族へ伝えることができるため、非常に重要な役割を果たします。
付言事項を書くメリット

付言事項は法律上の効力はありませんが、相続トラブルを防ぐうえで大きな意味を持つことがあります。
例えば、「長男に自宅を相続させる」とだけ書かれている場合、他の相続人は「なぜ長男だけなのか」と疑問や不満を抱くことがあります。
しかし、
- 長男が長年同居して家業を支えてくれたため
- 配偶者の生活を守るため
- 介護を献身的に行ってくれたため
といった理由が付言事項として記載されていれば、遺言者の意思が伝わり、相続人が納得しやすくなる場合があります。
もちろん、付言事項だけで全ての争いを防げるわけではありません。
しかし、「なぜそのような内容にしたのか」を伝えることで、不要な誤解や感情的な対立を避けられる可能性があります。
家族への最後のメッセージになる
遺言書は財産を分けるための書類というイメージが強いかもしれません。
しかし、付言事項は家族へ向けた最後のメッセージでもあります。
「これまでありがとう」「みんなで仲良く過ごしてください」といった感謝や願いを残すことで、遺された家族の心の支えになることもあります。
遺言書は単なる法律文書ではありません。
自分の意思だけでなく、大切な家族への想いを伝える手段としても、大きな役割を果たすのです。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

遺言書にはいくつか種類がありますが、実際によく利用されるのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
どちらにもメリットとデメリットがあるため、それぞれの特徴を理解したうえで選ぶことが大切です。
自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言とは、自分で作成する遺言書です。
費用をほとんどかけず、自分の好きなタイミングで作成できることが大きなメリットです。
また、内容を誰にも知られずに作成できるため、プライバシーを守りながら準備を進められます。
一方で、法律で定められた形式を満たしていないと無効になる可能性があります。
また、保管場所が分からず発見されなかったり、紛失・改ざんのリスクがあったりする点にも注意が必要です。
さらに、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していない場合は、相続開始後に家庭裁判所で「検認」の手続きが必要になります。
公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書です。
法律の専門家である公証人が内容を確認しながら作成するため、形式不備によって無効になる可能性が極めて低いことが大きなメリットです。
また、原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がほとんどありません。
さらに、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが不要なため、相続手続きを比較的スムーズに進めることができます。
一方で、作成には公証人手数料などの費用がかかります。
また、公証役場との日程調整や必要書類の準備など、一定の手間がかかる点はデメリットといえるでしょう。
どちらの遺言書を選ぶべきか
どちらが優れているというわけではなく、ご自身の状況に合わせて選ぶことが重要です。
例えば、財産が比較的少なく、内容もシンプルな場合には、自筆証書遺言でも十分対応できることがあります。
一方で、相続人が多い場合や、不動産・事業など複雑な財産がある場合には、公正証書遺言の方が安心できるケースも少なくありません。
「確実に自分の意思を実現したい」「相続人にできるだけ負担をかけたくない」という場合には、一度弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
遺言書は家族への最後の思いやり
遺言書は、単に財産を分けるための書類ではありません。
自分の意思を明確に伝え、残された家族が安心して相続手続きを進められるようにするための大切な準備です。
今回ご紹介したように、遺言書にはさまざまなメリットがあります。
- 自分の意思で財産の分け方を決められる
- 相続トラブルを未然に防ぎやすくなる
- 法定相続人以外にも財産を残せる
- 家族へ感謝や想いを伝えられる
一方で、形式を誤ると無効になる可能性があるため、内容や作成方法には十分注意する必要があります。
特に、相続人が多い場合や財産内容が複雑な場合には、専門家へ相談しながら作成することで、より安心して遺言書を残すことができます。
遺言書は、「自分のため」だけではなく、「家族のため」に作るものでもあります。
大切なご家族が相続で困らないよう、元気なうちから準備を始めることをおすすめします。
遺言書の内容は、ご家族の状況や財産内容によって適した方法が異なります。
「自分の場合は遺言書を作成した方がよいのか」
「どのような内容にすればよいのか」
とお悩みの方は、専門家へ相談することをおすすめします。